「大阪市中央公会堂×
J:COM インタビュー企画」
第3回:J:COM 担当社員インタビュー
「“見る”から“体験する”へ。
ガイドツアーが拓く、公会堂の新たな魅力」
株式会社ジェイコムウエスト 大阪市中央公会堂 自主事業・利用促進責任者 林 亮一
このインタビュー企画は、全6回シリーズでお届けします。
J:COMが公共施設の指定管理者として初めて管理・運営を担う「大阪市中央公会堂」の採択から、施設がどのように変貌・進化していったのか、その道のりをリアルタイムに追いかけます。
第3回となる今回は、「ガイドツアー」をテーマに、自主事業・利用促進責任者の林 亮一さんにお話を伺いました。
J:COMによる運営体制への移行を機に、単なる“施設見学”ではなく、“体験型コンテンツ”へと進化を遂げたガイドツアー。その背景にある考え方や工夫、運営面での苦労、そして施設価値への影響について詳しくお聞きしました。
▶ 第1回:J:COM 担当社員インタビュー「採択までの道のりと、描いた未来」
▶ 第2回:J:COM 担当社員インタビュー「動き出した運営の手応え、そして次なる一歩」
「見学」だけでは伝わらない。
公会堂の価値を“体験”として届けたい。
― はじめに、林さんの自己紹介をお願いします。
大阪市中央公会堂で、自主事業および利用促進の責任者を務めています。
主にガイドツアーを中心とした企画運営を担当しており、公会堂をこれまで以上に多くの方に知っていただき、訪れていただくための取り組みを進めています。
また、以前ご利用いただいていたものの、現在は足が遠のいているお客さまに、再び来館いただけるような仕掛けづくりにも取り組んでいます。
― ガイドツアーを始めた背景について教えてください。
ガイドツアーは魅力向上事業として位置付けられており、大阪市中央公会堂の魅力を市内外に発信するため、必ず実施しなければなりません。
大阪市中央公会堂では、地下展示室は一般公開しており、どなたでも見学いただけます。一方で、それ以外の部屋については基本的に貸館運営となっているため、実際に施設を利用された方しか入ることができません。
たとえば大集会室は大型催事などで利用される大きなホールですので、そのイベントに参加された方しか見ていただく機会がありません。また、特別室についても、結婚式や婚礼前撮りなどで部屋をご利用の方しか入室することができません。
歴史的価値の高い素晴らしい部屋を、多くの方に見ていただける機会をつくることがガイドツアーの目的です。
― ガイドツアーでは、どのような価値提供を目指したのでしょうか。
ガイドツアーは必須の事業として前指定管理者の時から実施されていました。私たちJ:COMが新たに運営を担う中で、「これまでと同じ形ではなく、何か変化を加えなければいけない」と考えていました。
そこで重視したのが、単なる「見学案内」ではなく、実際にその場の空気を感じ、文化財の魅力を体験いただきながら、お客さまに“特別な価値体験”と感じていただけるツアーです。
夜間ツアーや限定企画で、新たな来館者層を開拓
― ツアー内容で工夫している点を教えてください。
中央公会堂で最も見どころのある特別室は天井や壁面に日本の神話をモチーフにした絵画が描かれています。入室すると絵画に囲まれ、圧倒されるような感覚を覚えますが絵は高所にあるため、美術館のように近づいて見ることはできません。そこで高画質の放送用カメラを使って天井画のアップをモニターに映し出し油絵の凹凸まで感じていただけるよう工夫しています。
また、室内の大理石部分に実際に触れていただき、本物の大理石と、それ以外の部分との温度差なども体感いただいています。
このような体験を通じて、建物の魅力をより深く知っていただけるようにしています。
特別室の天井画
― 加えて、工夫されている点はありますか。
ガイドツアーに参加いただいた方限定で、オリジナルグッズをご用意しています。
公会堂のお土産自体はいくつかあるのですが、ガイドツアー参加者限定のボールペンやステッカー、ポストカードなどをご用意しており、その日に見学した部屋のデザインが入ったポストカードなどもお渡ししています。
また、アンケートにご協力いただいた方には、クリアファイルをお渡しするなど、参加した方だけが楽しめる要素も取り入れています。
さらに、「もっと喜んでもらえないか」という視点で、毎回小さな工夫も重ねています。
― 夜間ツアーも実施されていると伺いました。
はい。もともとガイドツアーは昼間(午前と午後)を中心に実施していました。参加されるお客さまは、60代女性の割合が非常に高い状況でした。他の世代にも公会堂の魅力を知っていただけないかと考え、「夜のガイドツアー」を企画しました。
夜の中央公会堂は、昼間とはまた違った雰囲気があります。夜にツアーを行うと、仕事帰りにも立ち寄りやすく、外観ライトアップも美しいためデートでも楽しめるのではないか、と考えたのです。
実際に実施してみると、20代〜50代のお客さまのご参加が大きく増え、カップルで来館されるケースも多く見られるようになりました。新しい層に施設の魅力を届けられたと感じています。
夜のガイドツアーの様子
“毎回改善”を積み重ね、満足度97%へ
― 運営面で苦労したことや、改善してきたことについて教えてください。
ガイドツアーでは、毎回アンケートを実施しています。その中では、「ここをもっとこうしてほしい」といった改善要望や指摘を数多くいただきますので、その声を次回運営へ反映するようにしています。
たとえば、外観の案内をするときに、「ガイドの説明が聞こえにくい」というご意見をいただいた際には、すぐにヘッドセットを導入しました。
また、受付導線が混雑するという課題に対しては、受付開始時間を早めたり、お客さまが動きやすい並びへ見直したりするなど、細かな改善を積み重ねています。
「大集会室や特別室は見たことがあるが、ほかの部屋も見てみたい」といったお客さまの声も多く寄せられています。こうしたニーズに応える形で、現在は大集会室・特別室・中集会室・小集会室の4つの部屋を見学いただける「スペシャルガイドツアー」も実施しています。
ただ、これらの部屋が同じ時間帯にすべて空いていることは少なく、実施できる機会が限られているため、非常に希少性の高いツアーとなっています。
2025年9月からこれまでに約20回実施していますが、毎回アップデートを続けている状態です。初期のツアーに参加された方が今参加すると、「だいぶ変わった」と感じていただける内容になっていると思います。
― (毎回改善の)ガイドツアー開始後、どのような変化がありましたか。
ありがたいことに、ガイドツアーのアンケートでは、「とても満足」「満足」とご回答いただいた方が97%となっています。そのうち77%は「とても満足」という評価でした。
また、申し込み経路にも変化が出ています。以前はホームページやSNS経由が中心だったのですが、現在は「知人や家族からの紹介」という口コミ経由が増えており、全体の約35%を占めています。
さらに、ツアー参加後にお土産をご購入いただくケースも多く、館内の物販売上にも良い影響が出ています。実際、ガイドツアー終了後は、自動販売機で展開しているオリジナルグッズの売上が伸びる傾向があります。
― ガイドツアーは、公会堂の価値にどのような影響を与えたと感じていますか。
一番大きかったのは、スタッフの意識変化だと思っています。
当初、ガイドツアーは利用促進チーム中心で運営していたため、ほかのスタッフにとっては「今日はガイドツアーがあるのか」程度の認識だった部分もありました。
そこで、スタッフにガイドツアーを体験してもらう機会を設けたところ、「自分たちが働いている施設には、こんな魅力があったのか」と改めて感じてもらえるようになりました。
私自身も大阪出身ですが、「中央公会堂が重要文化財であることは知っていても、中で何が行われているのかまでは知らなかった」という方は非常に多いと感じています。だからこそ、ガイドツアーを通じて、公会堂の歴史や成り立ち、文化的価値を知っていただくことには、大きな意味があると感じています。
ガイドツアーを起点に、公会堂の新たな価値創出へ
― 今後の展望について教えてください。
昼の部は約5倍、夜の部は10倍以上の倍率となっており、参加したくてもツアーに参加できないお客さまが多い状況です。そのため、今後は開催回数をさらに増やしていきたいと考えています。また、現在実施している昼・夜・スペシャルガイドツアーに加え、貸館利用者向けの「オプショナルガイドツアー」も実施予定です。
さらに、異業種とのコラボ企画も検討中です。たとえばクルーズ船と連携し、中之島周辺の近代建築をガイド付きで巡った後に中央公会堂を見学いただく企画や小集会室が元々食堂だった歴史を活かしたアフタヌーンティー企画なども実施していきたいと考えています。
施設見学だけにとどまらず、“公会堂で過ごす時間そのもの”を楽しんでいただけるコンテンツへ発展させていきたいですね。
また、外国人観光客の増加を踏まえ、同時通訳を活用した多言語ガイドツアーにも取り組んでいくことも検討しています。
― 最後に、記事をご覧いただいている方へメッセージをお願いします。
大阪市中央公会堂では、さまざまなガイドツアーを企画しています。館内を巡りながら、建物の歴史や魅力を実際に“体験”していただける内容になっていますので、ぜひ一度ご参加いただければと思います。
最新情報はホームページなどでも発信しておりますので、ぜひチェックしていただき、多くの方に公会堂の魅力を知っていただければうれしいです。
※本記事の内容は、2026年6月時点の取材情報に基づいています。