導入事例インタビュー
大阪府 千早赤阪村様 『かんたん窓口』
「シンプル」をコンセプトに
高い利用率を実現した窓口DXの取り組み
自治体窓口での「何度も同じ内容を書く」「長時間待たされる」といった不便を解消する取り組みとして、デジタル庁が推進する「書かない窓口」が全国に広がりつつあります。住民の利便性向上と職員の業務効率化の両立への期待は高いものの、十分な効果を発揮できていないケースもあるとされています。
そうしたなか、大阪府 千早赤阪村では、「かんたん窓口」のネーミングで2025年12月に導入し、当初から高い利用率を実現しています。千早赤阪村 総務部 総務政策課の廣嶋さまと濱田さまのお二人にお話を伺いました。
左:濱田さま 右:廣嶋さま
「かんたん窓口」とは(千早赤阪村ホームページより)
このシステムは、マイナンバーカード・運転免許証を利用して、申請書等に住所・氏名・生年月日を印字するもので、今まで記入いただいていた申請書等の記入項目が少なくなります。そのため、窓口で住民票の写し等の申請書を作成する際に手書きの負担が減ります。
―「かんたん窓口」の企画背景を教えてください。
もともとはタクシーチケットの電子化にあたり、タクシーチケットの利用だけでなく、申請する部分もセットで利便性を向上させたい、というところから検討がスタートしました。
せっかくタクシーチケットの申請書を書かないでできるようにするのであれば、それだけではもったいないので、住民票など他の申請も同じようにできるといいよねという流れで検討を進めたことが出発点です。
―住民票の窓口手続きを広くデジタル化するところから検討を始める自治体も多いなかで、ユニークな検討プロセスですね。
そうですね。千早赤阪村のように、窓口業務だけでなく、アプリの利用とセットで検討を始めるケースはあまりないと思います。
千早赤阪村の取り組みは、デジタル田園都市国家構想交付金の「書かない窓口」をベースに独自の方針を加味して「かんたん窓口」と呼んでいます。
[書かない窓口]地方自治体の窓口での住民の負担を軽減と、地方自治体職員の業務負荷の軽減を目指して、デジタル庁が推進する取り組みです。
―一般に「書かない窓口」と呼ばれる取り組みですが、「かんたん窓口」と呼ぶのですね。
はい。千早赤阪村ではあえて「かんたん窓口」と呼んでいます。申請書の作成では、どうしても書かざるを得ない部分が残ります。それをすべてデジタル化でカバーしようとすると、仕組みが複雑になったり、操作が煩雑になったりします。
そうではなく、単純にマイナンバーカードの券面情報の印字だけをするというシンプルなものにすることで、住民の方と職員、双方の負担を減らすことを主眼として「かんたん窓口」と呼んでいます。このコンセプトは続けたいと思います。
―役場の窓口業務にも対象を拡大される判断をされましたが、「かんたん窓口」導入前の窓口の状況はどのような状況でしたか。
「書かない窓口」を導入される自治体では、窓口の混雑を解消することが目的になるケースも多いと思いますが、千早赤阪村の場合はそれが主目的ではありませんでした。
千早赤阪村スマートビレッジ戦略に向けた指針において、マイナンバーカードの普及や住民利便性の向上などを掲げています。マイナンバーカードはある程度普及したものの、便利に使える場面が少ないという課題があり、この施策はそうした課題の解決に有効であると判断して取り組みを始めています。
―千早赤阪村は高齢の方が多いなか、皆さんスムーズにご利用されていますか。
はい。高齢の方だけでなく、幅広い方に利用していただいています。窓口での申請のうち、現時点でも8割は「かんたん窓口」の利用です。
スムーズにご利用いただいていますが、使い方に戸惑う方もいらっしゃいます。その対応として総合窓口を新たに設置し、職員が手続きをサポートする運用を行うことで、トラブルなくご利用いただいています。
窓口の分かりやすい場所に「かんたん窓口」を配置
―窓口手続きをデジタル化するための準備は大掛かりなものになるイメージがあります。
今回のケースは仕組みがとてもシンプルなので、業務フローの追加変更に対しての庁内関係部署の理解もスムーズでした。
―「かんたん窓口」の導入はどの程度の準備期間でしたか。
導入を決めてキックオフしてからサービス開始まで4カ月もかかっていないので、思ったよりも早く実現できています。要件を絞り、意識的にシンプルにしたことも寄与したと捉えています。
―導入にあたって目標値などは設定されましたか。
窓口をご利用される方のうち、「かんたん窓口」の利用割合を2026年度末までに60%、2027年度末までに80%とする目標としていました。これは既に前倒しで実現できています。
手続きにかかる時間の短縮も目指しており、導入前に20分程度かかっていた業務を、2026年度末では12分まで短縮することを目標としています。例えば住民票と印鑑証明が欲しいといった、複数の手続きを同時に行うようなケースで導入効果が大きいです。
書類の記入台にも「かんたん窓口」の案内
―「かんたん窓口」をご利用になった住民の皆さまのお声はいかがでしょう。
マイナンバーカードの情報を自動で印刷できるのは、住民の方の負担が軽減されていることもあり、手書きが減ってとても楽になった、使い方も簡単で便利になった、というお声を多くいただいています。
―サービス範囲を広げるなど今後の予定はありますか。
住民の方が窓口でご利用になる主要な手続きについては概ねカバーできています。
現時点では機能追加などは考えていませんが、住民の方のお声を聞きながら検討していきたいと思います。
―しっかりとしたお考えのもと、あえてシンプルな仕組みを選択しているということですね。そのうえで、運用の課題はありますか。
かんたん窓口には顔認証機能があり、本人確認に利用可能ということでしたが、住民の方にできる限りシンプルに使ってもらうため、あえてこの機能は利用しないこととしていました。このため、導入前には想定できていなかったのですが、かんたん窓口で使ったカードを鞄にしまった後、本人確認のため再度カードの提示が必要になり、二度手間になってしまうことがありました。現在は、かんたん窓口の利用後にカードをお預かりして本人確認を行うフローに変更するなど、運用面で工夫することで課題は解消しています。
―シンプルさを損ねない運用を重視されていますね。千早赤阪村では高い利用率を導入直後から実現できています。一方で、サービス導入したものの利用が伸び悩んでいる自治体もあると聞きます。
他の自治体の事例を視察に行ったのですが、十分に活用されていないと思われるケースもありました。サービスを導入するだけでなく、使っていただくにはどうすればいいかを考えた結果、窓口でご案内する職員を配置するなど、手厚く進めています。
サービスを実際に利用するのは住民の方なので、皆さんがつまずかないように、できる限り分かりやすくシンプルであることが大事だと思います。
―ありがとうございました。
インタビュアー
JCOM株式会社
林 俊治
新たにサービスを導入する際は、必要な機能がどこまでかを判断するのが難しく、決定までに時間を要するケースも多いと思います。千早赤阪村は実現したいビジョンが明確で、あえてシンプルな仕組みにとどめることで、幅広い住民が利用しやすい窓口サービスを実現している点は他の自治体様にも参考になると感じました。
※記載の内容は取材時(2026年5月)の情報です。