導入事例インタビュー
大阪府 千早赤阪村様『むらぷりアプリ』
スマホ普及から始める
“使われる自治体DX”のかたち
行政サービスのデジタル化が進み、多くの自治体が住民向けにアプリを提供しています。特に高齢化が進展する地域では、アプリを提供するだけでなく「使いやすさ」と「参加のしやすさ」が大きな鍵となるなか、大阪府唯一の村である千早赤阪村が2026年2月に提供を開始した「むらぷり」アプリは、課題にどう向き合っているのかを千早赤阪村 総務部 総務政策課の廣嶋さまと濱田さまのお二人にお話を伺いました。
左:濱田さま 右:廣嶋さま
「むらぷり」アプリとは(千早赤阪村ホームページより)
村内にお住まいのかたを対象としたスマートフォン向けアプリ「むらぷり」を配信しています。
「むらぷり」は、村からのお知らせやイベント情報・日々の暮らしに役立つ情報の共有や地域公共交通助成事業デジタル利用券機能ができるアプリです。
―「むらぷり」アプリの企画背景を教えてください。
村の方針として「スマートビレッジ」を掲げています。デジタル化を推進し、全村民が必要な時に必要な情報にアクセスできる環境を整えたいという考えがありました。
デジタル化を検討する対象に、住民向けのタクシーチケットがありました。検討の過程でJ:COMと会話する機会があり、単にタクシーチケットをデジタル化することにとどまらず、お知らせを確認できるなど村のポータル的な機能を付け加えたほうがいいのではという提案がありました。タクシーチケットのデジタル対応と村のポータルを一体化させたアプリという方向性が固まりました。
―当初はタクシーチケットをアナログからデジタルに切り替えようというところから検討が始まっていたのですね。タクシーチケットのデジタル化に取り組んだ背景を教えていただけますか。
村としてデジタル化を進めようという大きな流れのなかに位置づけています。
アナログのサービスをデジタルに移行するのは単純ではなく、紙でなければ難しいという方も必ずいらっしゃいます。そうした方にも抵抗なく受け入れていただけるよう、村ではこのアプリに取り組む前から、高齢者向けにスマートフォンを持っていただく取り組みを進めていました。
[参考]J:COMニュースリリース「千早赤阪村(大阪府)×J:COM『村でスマホをあたりまえに「はじめてのスマホ」モニター募集事業』開始」
スマートフォンを持っていただいた次のステップでは、スマホ道場を開催しました。多くの高齢者の方に参加していただいて、皆さんがスマートフォンを操作できるようになりました。スマホ道場は、J:COMにも「地域活性化起業人」として協力を得て、2年半活動しました。
[参考]「押忍!スマホ道場」紹介動画
そうした準備期間を経て、スマートフォンでどういったサービスを提供するかを考えた第1弾が、タクシーチケットのデジタル化から構想を広げた「むらぷりアプリ」です。
―なるほど。単純にアプリを作ったので使ってくださいということではなく、スマートフォンを持ってもらう、慣れてもらう、使ってもらうと段階を踏んで進めてきたということですね。
はい。多くの方に抵抗なく受け入れていただけるように丁寧に進めました。
―スマートフォンでサービスを提供する際、アプリだけでなく、ブラウザやLINEなど色々な選択肢が考えられます。今回、アプリを選択されたのは、どのような点が背景にあったのでしょうか。
高齢者の方にブラウザで色々やっていただくよりも、アプリのほうがシンプルで使いやすいという考えはありました。
アプリには色々なサービスを統合しやすいというメリットもあります。ブラウザの場合、さまざまなサイトに手軽にジャンプできますが、体験がバラバラになりがちです。村のアプリとして、すべてを集約できることがポイントと考えました。
―アプリに盛り込みたい機能は当初の構想に沿ったものでしょうか。
はい。他の自治体のアプリなども参考にしながら、限られた費用のなかでどこまでできるか検討を重ねました。
―高齢の方に向けて工夫したポイントはありますか。
シンプルなユーザーインターフェース(UI)を追求しました。例えば画面遷移では、デジタル利用券を使うときは「開始」ボタンを押すなど、これを押したら次に進むということが分かりやすいようにしました。文字も大きくシンプルにするなど、使いやすさにこだわっています。
実証実験の段階で各地区をまわり、住民説明会を6回開催し、デモ機を使ってもらって、実際のご意見も聞いて開発を進めました。
―住民の皆さんがスムーズに利用できるように色々と工夫されたことが分かります。アプリの提供を始めてからのご意見はどうでしょうか。
スマートフォンに慣れている方は、紙のタクシーチケットを持ち歩かなくていいので楽になったとおっしゃいます。逆に、スマートフォンに慣れていない方からは、紙のチケットのほうがよかったというご意見もあります。普段、スマートフォンを使っているかどうかに影響されます。
―アプリを便利に使ってもらうためにも広くダウンロードしてほしいですね。
サービスを開始して3カ月程度であり、普及はこれからと認識しています。人口4,506人(2026年3月末時点)に対し、2026年度末で600ダウンロード、2027年度末で700ダウンロードという目標を設定しています。
自治体アプリですので、多くの住民の方に利用していただけるようにしたいです。そのため、社会福祉協議会が開催しているアプリ講座と連携して、「むらぷり」アプリを使っていただく機会を増やすことを検討しています。
―高齢の方も多いので着実に普及を進めるということですね。改めて、タクシーチケットをデジタル化することで、行政側のメリットはどういう点でしょうか。
いまは紙とデジタルを併用しているので、業務負荷の削減効果などは限定的です。すべてがデジタルに移行できれば、業務効率が大幅に向上すると見込んでいますので、デジタル移行を図っていきたいと考えています。いまは過渡期の位置づけですね。
―アプリの利用活性化に取り組んでいる自治体も多いです。ご経験からのアドバイスがあればお願いします。
千早赤阪村の例でいえばタクシーチケットをデジタル化しようというところから始めましたが、住民の方や自治体の現場の方の意見を聞いて、何をどうデジタル化していくかという目標を設定することが大事だと思います。
―ありがとうございました。
インタビュアー
JCOM株式会社
林 俊治
J:COMは、2023年に千早赤阪村と「地域活性化起業人制度による派遣に関する協定」を締結しました。
千早赤阪村の取り組みは、単なるアプリ導入ではなく、「住民が使える状態をつくる」ことを重視した点に特徴があると感じています。
J:COMは地域のデジタル化を推進するためにスマートフォンの普及や理解の促進、「むらぷり」アプリの開発などさまざまな側面からご支援を続けており、今後とも地域のお役に立てるように取り組んでいきます。
※記載の内容は取材時(2026年5月)の情報です。